本文へ

Osaka Prefectural Police

現在の位置

持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する検討報告書(HTML版)

令和2年3月

事務局:大阪府警察本部 交通部 交通規制課

持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する検討報告

はじめに

交通安全施設は、自動車をはじめとする道路利用者のスムーズで安全な通行を確保するためのものであり、モータリゼーションの進展に合わせて道路とともに整備される一方、1970年代の交通事故多発状況に際しては、歩車分離のための「横断歩道橋」を含めて大量に整備された。これらは、府民の財産であり、かつ、社会資本であるが、その健全な運用には長期間にわたり、多額の経費による維持管理が必要不可欠である。しかしながら、それらを維持管理するための十分な財源の確保が困難になっており、機能不全による交通への支障も懸念される。そのため、機能不全のリスクを最小限にするための維持管理計画や効果的新規整備のための計画、施設そのものの長寿命化技術の導入、施設の共用(共架)等による経費削減策などの検討が喫緊の課題となっている。
一方、道路交通環境の改善や府民の移動ニーズの変化など、これまでに整備されてきた施設機能の有用性に変化がみられるケースも少なくないと推察されることから、既存施設のあり方についても再検討する必要がある。加えて、近い将来、自動車交通量の減少やパーソナルモビリティなどの新たなニーズに対応した移動手段の導入、さらには自動運転の実用化など、次世代モビリティの展開に際しては、道路とその安全・円滑性を確保するための施設の検討が必要となることも想定される。
以上のような社会的背景の変化を踏まえて、本報告では、既存の施設整備と維持管理の状況を把握した上で課題を抽出し、代替的措置の可能性も踏まえた、それらの課題改善のための考え方を提示するとともに、その考え方に基づいた整備の在り方を検討し、加えて将来の環境変化や技術革新をも勘案した交通安全施設のあり方を検討するための仕組みづくりについても言及するものである。

1 交通安全施設の整備と維持管理の状況

交通安全施設には、警察と道路管理者がそれぞれ管理するものがある。ここでは、大阪府警察と各道路管理者が整備する施設の種類を整理するとともに、大阪府警察の管理する施設の整備と維持管理の状況について振り返ることとする。

(1) 交通安全施設の種類

「交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年4月1日号外法律第45 号)」の条文によると、管理者毎に次のような種類がある。
ア 道路管理者が管理する交通安全施設
道路そのものの付帯設備であり、道路利用者が安全に道路を通行するために設置するもの。
(歩道、道路照明、道路舗装、防護柵、中央帯、案内・警戒標識・道路情報板)
イ 警察が管理する交通安全施設
道路利用者の安全と円滑のために、必要な規制情報を明示するために設置するもの。また、交通情報の収集・提供するために設置するもの。
(信号機、規制標示、規制標識、交通管制センター(車両感知器・交通情報板等))

(2) 大阪府警察による交通安全施設の整備と維持管理の状況

ア 交通安全施設整備状況(平成30年度末)

  •  信号交差点 12,321交差点
  •  道路標識 194,583本
  •  道路標示
    横断歩道 50,708本
    実線標示 85,350キロメートル
    図示標示 243,676個

イ 施設整備および更新等に係る経費
限られた財源状況から、使用年数を超過した交通安全施設を全て更新することは困難である。
交通安全施設等整備費は、右肩下がりで、予算試算数のピーク時である平成8年を100とした場合、平成30年では60まで削除されている。
また、現在の予算において、全信号制御機約12,000基を更新しようとした場合、試算上整備費により更新できるのは、約65パーセントであり、信号制御機は約8,000基となる。

2 施設整備を踏まえた課題の抽出

交通安全施設は、自動車交通の整序化と道路利用者の安全な通行を最大限に確保することを目的としているが、地形的制約や旧来からの慣行的通行機能を維持するために、複雑な形状であったり、幹線道路に交差する多数の細街路に信号を設置したり、横断歩道橋を含めた施設配置状況によっては、歩行者の乱横断状態になったりといった問題も見受けられる。
また、老朽化による故障や災害時の機能低下によって、通行に支障をきたすことも懸念されるが、そのような場合には、重要な路線や交差点での早期復旧が求められる。一方で、設置時からの環境変化によって、当初の機能が発揮できていないようなケースもある。
このようなことから、これからの施設整備の計画を立案するためには、一定期間経過後の既存施設の効果再評価、交通環境の変化に対応した改善、新たな技術導入による道路環境改善等を勘案することが重要となる。
そこで、本報告では、検討会での議論を踏まえて、主として次の課題について検討した内容を取りまとめることとした。
[課題1] 交通環境変化に伴う交通安全施設の機能再評価
[課題2] 交通の整序化と安全確保のあり方の再考
[課題3] 長期的視点に基づく交通安全施設整備の考え方
[課題4] 効果的施設運用のための関係機関の連携
[課題5] 相互理解による効果的な施設整備と運用
[課題6] 持続可能な施設整備検討のための仕組みづくり

3 交通環境変化に伴う交通安全施設の機能再評価[課題1]

モータリゼーションに対応するために進められた交通環境そのものの課題に加え、その整備過程での地形的制約や旧来からの慣行的通行機能を維持するために、交差点形状が複雑になり、信号制御に苦慮している例もあるが、それらの中には改善の余地のあるものもある。また、バイパスの整備等による交通流の変化から、従前の状況とは異なっているケースもある。このような交通環境の変化を考慮して、交通安全施設の役割を見直し、代替施設を含めた施設のあり方を再検討することは重要な課題の一つと言える。

(1) 交差点処理の見直し

交差点改良(交差点のコンパクト化等)により交差処理を単純化することで、不要となる信号灯器の撤去や、交差点右左折時の速度抑制により横断歩行者等との事故を防止又は軽減させることが期待される。

(2) 機能低下箇所の抽出と対応

小学校の廃校や通学路の集約若しくは病院の移転等により利用者が減少している信号機及び車両の交通量が減少している生活道路上の信号機については、本来の機能が低下している箇所を抽出し、代替施設の導入と信号機の撤去を視野に入れた交通安全対策の見直しを図る。

(3) 既存施設代替可能性の検討

近年、大規模災害による停電等により、信号による交差点処理において困難をきたしたことから、信号機に頼らない交通安全施設の検討を行う必要がある。
また、生活道路における代替施設の検討においては、地元住民との協働による地域全体における交通安全対策を考慮しなければならない。
ア 形状が複雑な交差点におけるラウンドアバウトによる交差点処理
イ ゾーン30などのエリア内の自動車交通を抑制する対策
特に、エリア内の信号設置は、夜間等の自動車交通量の少ない際に歩行者による信号無視、歩行者がいない時にでも停止することによる環境負荷の増大などを生じさせることが懸念され、信号設置が必ずしも適当な対応とは言えないケースも少なくないため、一時停止規制やハンプ・道路標示等の物的対策での対応を考慮する。

4 交通の整序化と安全確保のあり方の再考[課題2]

交通安全施設の元来の目的である交通の整序化と安全の確保の機能を遺漏なく、かつ最大限に発揮するためには、3で述べた環境変化や施設老朽化に遅滞なく対応する必要がある。しかし、すでに示したように膨大な数の施設をすべて維持することは容易ではない。そのため、災害時の復旧をも想定した主要道路の設定が必要であり、路線や交差点機能を評価することが重要となる。また、既存施設の効果を再検討し、道路構造(交差点処理など)や安全機能の観点から代替施設も含めた対応も重要と言える。

(1) 機能重要度評価(ランク分け)

交通安全施設は、常に正常な状態で機能することが大前提であるが、施設の老朽化や災害の発生により、故障や倒壊等、機能不全に陥ることも想定できる。従って、緊急交通路及び常態的に交通量の多い幹線道路等において優先的に点検・復旧を実施し、また電源付加装置や信号表示の高度化などの更なる設備投資をしていくことが必要である。そのような意味では、交差点の機能重要度を改めて評価することが重要である。

(2) 交差路処理の考え方

交差点処理の基本は、「車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を進行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を進行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。(道路交通法第36条4項 交差点の安全進行の義務)」によるものであり、更に交通量や道路環境・人間の合理的な行動を考慮する必要がある。

(3) 横断箇所の集約

歩行者が安全かつ便利な使い方ができるように、横断施設の配置や横断箇所の集約についても考慮する必要がある。

(4) 安全対策としての標識・標示復旧の考え方

信号交差点と同様に、緊急交通路を中心に常態的に交通量が多い幹線道路等、及び近未来的には自動運転・運転支援技術への対応等の重要度を鑑み、優先的に点検し、老朽化により摩耗したものは、道路利用者の視認性改善による安全確保のため早期に更改する。

5 長期的視点に基づく交通安全施設整備の考え方[課題3]

前述のように、道路やその付帯施設は、需要に対応するため整備されてきたが、需要は時代とともに変化し、また新たな需要への対応によって既存施設の役割が変化することもある。そのため、これからの施設整備は、モータリゼーション最盛期のような需要追随型ではなく、長期的視点に基づく必要がある。特に、施設の長寿命化やライフサイクルコストを勘案した社会的費用の縮減や効果的な点検および維持管理システムについても、改めて検討する必要がある。
さらに、近年の情報通信技術の目覚ましい進展を念頭に、国のSociety5.0でも提示されている次世代モビリティ(自動運転やパーソナルモビリティなど)への対応について、継続的に考慮する必要がある。

(1) 施設改善のための長寿命化

保守委託業者・警察署員による定期点検及び点検結果に基づく優先順位を付けた修繕工事の施工や、信号柱の二重管構造の採用及び標識柱に対する鉄心の採用等による柱の長寿命化実施するほか、他の管理者の施策についても導入を検討する。

(2) 施設改善のための長寿命化

標示の塗装剤の改良(繊維・セラミック素材)による耐摩耗性向上や、LED式灯器の採用など、技術革新に速やかに対応する。

(3) 社会的費用からみた整備の考え方

ア LED式灯器採用による電気料金の削減及び視認性向上に伴う灯器数の削減
イ 灯器連動化(1つの制御機で複数の交差点灯器を制御)による制御機費用の削減
ウ 照明柱等への共架による専用柱数の削減

(4) 点検・維持管理計画

ア 交差点単位での保守点検委託の実施
イ 点検結果に基づく老朽化の状況に応じたピンポイント修繕、または、交差点全体の更新への対応

(5) 次世代モビリティへの対応

ア 自動運転に伴う施設機能の検討
イ 交通弱者・スローモビリティ対応のための道路空間の再配分を踏まえた支援システムへの対応

6 効果的施設運用のための関係機関の連携[課題4]

冒頭にも示したように、交通安全施設は交通管理者と道路管理者の整備によるものがある。また、関連施設としては、電気・通信のための柱類も設置されている。交差点等の交通の安全を高めるためには、多数の施設が個別に整備されるような状況は避けなければならない。つまり、施設の効果的運用のためには、管理者の異なる多数の施設が包括的に整備されることが望ましい。また、そのことが、経費の節減につながることは言うまでもない。

(1) 柱類の整理による空間解放(視覚環境や通行環境の改善)

特に交差点では、信号、標識、照明柱に加えて電柱が多数存在することが多く、道路利用者の視認性が阻害される危険性がある。また、狭幅員道路や歩道では、柱類のために通行空間がさらに狭められ、通行の危険性が阻害されることも少なくない。そのため、柱類を整理整備することによって、これらの問題を改善することが望ましい。

(2) 共架や更新時期の調整による同時施工(一体整備)等による経費節減

上記の課題改善のために共架することや、更新時期を調整して工事による通行障害を軽減することは、経費削減と安全性に寄与するところが大きいと考えられるため、関係機関のさらなる連携が望ましい。

7 相互理解による効果的施設整備と運用[課題5]

道路とその付帯施設は、交通の整序化と安全確保のために、管理者が専門的見地と経験に基づいて整備・改修しているが、その効果は利用者や地域の人々の理解に依るところが大きい。そのため、幅広い意見を収集し、その内容を検討するとともに、実施した施策等については積極的に広報することが重要である。また、通学路や生活道路等のエリアの安全性を高めるためには、地区内居住者の理解と協力が不可欠であり、市民協働の実践の場としても重要である。

(1) 施設整備事例の広報強化

交通安全施設の新設及び更新や改良の事例についての広報を強化し、市民や道路利用者の理解を得る。

(2) 標識BOX及び信号機BOXやJAF交通安全実行委員会等からの問題提起奨励

交差点における渋滞対策や速度超過に対する信号機設置要望等については、道路管理者等の他の管理者とも情報を共有するとともに、その対応内容について広報を強化する。また、その要望等の対応にあたっては、信号機設置だけでなく、道路更改等の他の交通安全対策等も考慮して対応する。なお、法順守行動の励行や安全性が懸念される場合には、既存信号機の撤去についても考慮する。

(3) エリア対策箇所等での学習会による地元理解

道路利用者(特に地元住民)に対し、有識者等を交えた勉強会等により信号機をはじめとした交通安全施設の設置に伴うメリットとデメリットについて説明し、相互理解のもと交通安全対策を講じる。

8 持続可能な施設整備検討のための仕組みづくり[課題6]

これまでに述べてきたように、過去に多数整備してきた施設を効果的に維持管理するとともに、有識者と管理者による協議、あるいは地域や利用者の声を反映した新たな施設整備を遅滞なく実施するためには、継続的にその妥当性や方法等について検討する仕組みが必要不可欠である。そのため、大阪府道路交通環境安全推進連絡会議(安推連)や管理者による危険箇所での立会など、既存の組織や連携体制を活用するとともに、機動性・持続性のある組織の構築を検討することが望ましい。

以 上