特定小型原動機付自転車安全利用ハンドブック 1 特定小型原動機付自転車(特定原付)とは。 令和5年7月1日から原動機付自転車の一類型として「特定小型原動機付自転車」が創設されました。 原動機付自転車のうち、一般原動機付自転車は運転免許が必要。原動機付自転車のうち、特定小型原動機付自転車(最高速度20キロメートル毎時以下、最高速度表示灯は点灯)、またそのうち条件を満たした場合の特例特定原動機付自転車(最高速度6キロメートル毎時以下、最高速度表示灯は点滅)は運転免許は不要。 特定小型原動機付自転車は、次の基準を全て満たすものをいいます。 ・車体の大きさが長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること ・電動機として定格出力が0.6キロワット以下の原動機を用いること ・時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと ・走行中に最高速度の設定変更ができないこと ・AT機構(変速操作が不要)であること ・最高速度表示灯(緑色灯)が備えられていること (注意、これらの基準を満たさないものは、形状が電動キックボード等であっても一般原動機付自転車等に該当し、車両区分に応じた運転免許が必要であり、ヘルメット着用義務等の交通ルールが適用されます。) (注意、令和5年6月30日以前に制作された車両については、令和6年12月22日までの間、「型式認定番号標」または、「性能等確認済シール」もしくは特定小型原動機付自転車に取り付けることとされている小型化「ナンバープレート(標識)」を表示していれば、最高速度表示灯の備え付けが猶予されます。) 2 特定原付を運転できる人 16歳以上(免許は不要)(注意、16歳未満の人は運転禁止) (道路交通法第64条の2第1項、(罰則)6月以下の懲役又は10万円以下の罰金) また、特定小型原動機付自転車を運転することとなるおそれのある16歳未満の者に対して特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています。 (道路交通法第64条の2第2項、(罰則)6月以下の懲役又は10万円以下の罰金) 3 乗る前の準備 購入時や乗る前にしっかり確認しましょう。 (1) 必要な保安装置の確認 特定小型原動機付自転車には保安基準に定められた装置が備えられている必要があります。基準を満たしていない機体は、公道を走行することができません。 前照灯(ヘッドライト) 警音器(クラクション等) バッテリーの安全性(PSEマーク等の基準への適合を確認) 最高速度表示灯(車道等では点灯、歩道では点滅に切り替わる) 制動装置(ブレーキ) 方向指示器(ウインカー) 尾灯、制動灯(テールランプ、ブレーキランプ) 後部反射器(リフレクター) その他に満たすべき基準として、 走行安定性(段差等を安全に走行できること) スピードリミッター(設定最高速度を超えて加速しないこと) などがあります。 (車体に「性能等確認済シール」が貼付されていれば、保安基準を満たしています。(出典、国土交通省ウェブサイト)) (整備不良車両の運転、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金等、(反則金)制動装置等6000円、尾灯等5000円) (2) ナンバープレートの表示 特定小型原動機付自転車の運転者は、市町村条例の定めるところにより、標識(ナンバープレート)を取得するとともに車体後部に取り付けなければなりません。 (公安委員会遵守事項違反、(罰則)5万円以下の罰金、(反則金)5000円) (3) 自賠責保険(共済)の加入 特定小型原動機付自転車は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済への加入が義務づけられています。 保険標章をナンバープレートに見やすいように貼り付ける等して、表示しなければなりません。 (無保険車運行(自動車損害賠償保障法第5条)、(罰則)1年以下の懲役または50万円以下の罰金) 4 乗車用ヘルメットの着用 特定小型原動機付自転車の運転者には、乗車用ヘルメット着用の「努力義務」が課せられています。 交通事故の被害を軽減するために頭部を守ることが重要です。 SG基準等の安全性が示されたヘルメットを選び、あごひもを確実に締めるなど正しく着用しましょう。 5 通行する場所 原則、「車道の左側の端」を通行します。歩道通行や車道の右側通行をしてはいけません。(注意)歩道通行は違反(後述10を除く) 「自転車道」や「普通自転車専用通行帯」も通行することができます。 (通行区分違反(歩道通行、右側通行等)、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金、(反則金)6000円) 6 右折・左折の方法 (1) 右折の方法 1 青信号で交差点の向こう側まで直進 2 その地点で止まり、右に向きを変える 3 前方の信号が青になったことを確認 4 進行方向へ進む (注意、常に「二段階右折」。小回り右折は違反となります。) (2) 左折の方法 1 後方の安全を確かめ、あらかじめウインカーを操作 2 道路の左端に沿って十分に速度を落とし、歩行者の通行を妨げないように曲がる (交差点右左折方法違反、(罰則)2万円以下の罰金または科料、(反則金)3000円) 7 従うべき信号 特定小型原動機付自転車は、原則として車両用の信号に従わなければなりません。 ただし、歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示がある場合は、歩行者用の信号機に従います。 (注意)歩道上を進行してきた特例特定原付については、歩行者用信号機があれば歩行者用信号に従います。 (赤色信号無視、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金等、(反則金)6000円) 8 交差点での一時停止 一時停止の標識がある交差点では、その交差点(停止線)の直前で一時停止し、交差車両等の通行を妨げないようにしなければなりません。 信号がない交差点での出合頭事故の多くは、一時停止をせず、安全確認を怠って交差点に進入したことが原因となっています。 (指定場所一時不停止等、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金等、(反則金)5000円) 9 通行の禁止 特定小型原動機付自転車の通行の禁止に関係する主な道路標識です。 道路標識に必ず従いましょう。 「通行止め」、「車両通行止め」、「車両進入禁止」、「特定小型原動機付自転車・自転車通行止め」、「指定方向外進行禁止」、「一方通行」、「特定小型原動機付自転車・自転車一方通行」 補助標識について 補助標識の「軽車両」「自転車」には特定小型原動機付自転車も含まれます。 補助標識の例(一方通行) 「自転車を除く」という補助標識がない場合は、特定小型原動機付自転車も一方通行です。 「自転車を除く」という補助標識がある場合は、双方向に通行できますが、進行方向の道路の左端に寄って通行しましょう。 (通行禁止違反、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金等、(反則金)5000円) 10 例外的に歩道を通行できる場合(特例特定小型原動機付自転車(特例特定原付)) 特定小型原動機付自転車のうち、次の条件を満たすものを「特例」特定小型原動機付自転車といい、例外的に歩道(自転車歩道通行可のみ)や路側帯(歩行者用路側帯を除く)を通行することができます。 時速6キロメートルを超える速度を出すことができないこと 最高速度表示灯を点滅させること 等 歩道を通行する際は 歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりません。 また、歩道等を通行する際は、歩行者優先です。歩行者の通行を妨げる場合は、必ず一時停止しましょう。 (歩道徐行等義務違反、(罰則)2万円以下の罰金または科料、(反則金)3000円) 歩道通行時の普通自転車と特例特定原付の違い 普通自転車は (1)歩道通行可の標識・標示がある場合 (2)13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体障がい者が運転する場合 (3)車道又は交通の状況に照らし通行の安全を確保するためやむを得ない場合 は歩道通行可能ですが、特例特定原付は (1)歩道通行可の標識や標示がある場合 のみ歩道通行可能です。 特例特定小型原動機付自転車の路側帯通行 路側帯とは歩行者の通行のためのスペースを確保したり、車道の効用を保つために、「歩道がない道路の端」や片側にしか歩道がない道路の「歩道がない側の端」に道路標示(白線)によって、区画された部分をいいます。 路側帯を通行するときは、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しましょう。 (路側帯進行方法違反、(罰則)2万円以下の罰金または科料、(反則金)3000円) また、道路の右側にある路側帯や歩行者用路側帯は通行することができません。 (通行区分違反、(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金、(反則金)6000円) 11 その他の交通ルール (1) 飲酒運転の禁止 飲酒運転は犯罪です、お酒を飲んだときは絶対に運転してはいけません。 ((罰則)5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(酒酔い運転した場合)、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(酒気帯び運転した場合)) (2) 二人乗りの禁止 特定小型原動機付自転車の乗車定員は1名です。2人乗りしてはいけません。 (定員外乗車、(罰則)5万円以下の罰金、(反則金)5000円) (3) ながらスマホの禁止 運転中のスマートフォン等の使用は禁止です。 (携帯電話使用等(保持)、(罰則)6月以下の懲役または10万円以下の罰金、(反則金)12000円) (4) イヤホンの使用 イヤホンで音楽を聴くなど、周囲の音が聞こえない状態での運転はやめましょう。 (公安委員会遵守事項違反、(罰則)5万円以下の罰金、(反則金)5000円) 12 駐停車違反 (1) 駐車も停車も禁止されている場所 次の場所では、赤信号や危険防止のために一時停止する場合を除き、駐車も停車もしてはいけません。 「駐停車禁止」の標識や標示がある場所 交差点、横断歩道 等 ((罰則)15万円以下の罰金等、(反則金)10000円等) (2) 駐車が禁止されている場所 次の場所では、停車はすることはできますが、警察署長の許可を受けたときを除き、駐車をしてはいけません。 「駐車禁止」の標識や標示がある場所 駐車場、車庫などの自動車用の出入口から3メートル以内の場所 等 ((罰則)15万円以下の罰金等、(反則金)9000円等) (注意)歩道上や道路右側(左側端に沿わない)も駐車してはいけません。 放置違反金制度の対象 車両の運転者に対して放置駐車違反の責任追及を行うことができないときは、放置車両の使用者に対し、公安委員会が放置違反金の納付を命ずることができます。 13 万一の事故の際は 運転者の義務として、 負傷者の救護 危険防止の措置(事故の続発を防ぐために、安全な場所に車両を移動等) 110番及び119番へ通報 を必ずしましょう。 これらの措置をとらなければ救護義務違反や報告義務違反等になる場合があります。 (救護義務違反、(罰則)10年以下の懲役または100万円以下の罰金等、報告義務違反(罰則)3月以下の懲役または5万円以下の罰金) 14 特定小型原動機付自転車運転者講習 違反行為(危険行為)を繰り返す者について、その危険性を改善し、将来における交通の安全と円滑を確保するための措置として、特定小型原動機付自転車運転者講習制度が設けられました。これにより、都道府県公安委員会は、一定の違反行為(危険行為17類型)を3年以内に2回以上行った者に対し、受講(講習時間3時間、受講料6000円)を命ずることができます。 「一定の危険な違反行為(3年以内に2回以上)」の場合、公安委員会から「講習の受講命令」、「講習時間3時間、講習手数料6000円」 受講命令に従わない場合は「受講命令違反(5万円以下の罰金)」 一定の危険行為(17類型) 1信号無視、2通行禁止違反、3歩行者用道路徐行違反、4通行区分違反、5遮断踏切立ち入り 6優先道路通行車妨害等、7交差点優先車妨害、8環状交差点通行車妨害等、9指定場所一時不停止等、10整備不良車両の運転、11酒気帯び運転等、12共同危険行為等、13安全運転義務違反、14携帯電話使用等、15妨害運転、(特例特定小型原動機付自転車のみの違反)16特例特定小型原付の歩道徐行等義務違反、17特例特定小型原付の路側帯進行方法違反 (まとめ)理解度チェック 次の問題(マルバツクイズ)に挑戦して、理解度を確認しましょう。 (1)特定小型原動機付自転車を運転することができるのは16歳以上であり、16歳未満の人は運転することが禁止されている。 (2)特定小型原動機付自転車で公道を走行するためには、市町村でナンバープレートを取得し、自動車損害賠償責任保険(共済)に加入するよう推奨されている。 (3)特定小型原動機付自転車が走行する場所は、車道の左端または自転車道であり、原則歩道は通行できない。 (4)最高速度が6キロメートル毎時を超えないよう設定し、最高速度表示灯を「点滅」させれば、どの歩道も走行することができる。 (5)特定小型原動機付自転車で右折するときは、一度直進して向きを変える「二段階右折」で右折する。 (問題の答え (1)マル、(2)バツ、(3)マル、(4)バツ、(5)マル) 電動キックボード等に乗るときは交通ルールを守りましょう。 安全が一番の近道。 令和5年12月