足痕跡取扱要綱の制定について
平成12年12月25日
例規(識)第89号
最近改正
平成27年3月25日例規(研・識)第50号
この度、「足こん跡取扱要綱の制定について」(昭和54年9月28日例規(識)第33号)の全部を改正し、別記のとおり平成13年1月1日から実施することとしたので、適正に運用されたい。
別記
足痕跡取扱要綱
第1 趣旨
この要綱は、足跡取扱規則(昭和54年国公委規則第6号。以下「規則」という。)及び足跡取扱細則(昭和54年警察庁訓令第9号。以下「細則」という。)の実施について必要な事項並びに痕跡(足跡を除く。)又はこれを採取したもの(以下単に「痕跡」という。)の取扱いについて必要な事項を定めるものとする。
第2 定義
この要綱における用語の意義は、次のとおりとする。
(1)足跡規則第2条第1号に規定する足跡をいう。
(2)足痕跡足跡及び痕跡をいう。
(3)現場足痕跡規則第2条第2号に規定する現場足跡及び犯罪現場その他被疑者が足跡を遺留したと認められる場所(以下「犯罪現場等」という。)に残された痕跡又はこれらを採取したものをいう。
(4)遺留足痕跡現場足痕跡のうち、関係者足跡及び被疑者以外の者が犯罪現場等に残したと認められる痕跡に該当しないもので、被疑者が遺留したと認められるものをいう。
(5)関係者足跡規則第2条第4号に規定する関係者足跡をいう。
第3 足痕跡の種類
1 足跡の種類は、次のとおりとする。
(1)素足痕(足紋及び足型をいう。)
(2)履物(靴下及び足袋を含む。)痕
2 痕跡の種類は、次のとおりとする。
(1)タイヤ痕
(2)手袋痕
(3)工具痕
(4)その他の痕跡
第4 現場足痕跡の採取、証拠保全及び報告
1 警察本部の犯罪捜査を担当する所属の長及び警察署長(以下「署長等」という。)は、現場鑑識活動を必要とする犯罪の発生を知ったときは、直ちに所属職員を臨場させて、現場足痕跡の発見、保全及び採取に努めるものとする。
2 署長等は、現場足痕跡の採取に当たっては、採取の日時、場所、方法及び立会者並びに採取者を明らかにするとともに、写真、見取図等を作成し、証拠力の保全に努めるものとする。
3 前記1により、現場足痕跡を採取した所属職員は、現場指紋、足痕跡等採取報告書(大阪府警察指掌紋取扱規程(平成10年訓令第29号。以下「規程」という。)別記様式第8号)により、署長等に報告するものとする。
第5 現場足痕跡等の送付
1 署長等は、前記第4の3により報告を受けたときは、当該報告に係る現場足痕跡及び関係者足跡(以下「現場足痕跡等」という。)を速やかに、次に掲げる現場足痕跡等の区分に応じ、それぞれに定める者に送付するものとする。
(1)現場足跡、関係者足跡、タイヤ痕及び手袋痕鑑識課長
(2)タイヤ痕及び手袋痕以外の痕跡科学捜査研究所長(以下「研究所長」という。)
2 署長等は、前記1により現場足痕跡等を送付する場合は、事件ごとに分けて、足痕跡送付・保管袋(別記様式第1号)に収納し、又はこれを貼り付けて、現場足痕跡等の中に対照できる足痕跡等があると予想される場合は現場指紋、足痕跡等送付書(規程別記様式第8号)を、対照できる足痕跡等がないと予想される場合は現場指紋、足痕跡等簡易送付書(規程別記様式第8号の2)を添付の上、行うものとし、現場指紋、足痕跡等送付簿(規程別記様式第10号)に必要事項を記載しておくものとする。
3 鑑識課長は、前記2により現場指紋、足痕跡等簡易送付書を添付して送付された現場足痕跡等について、後記第6の(1)に掲げる検査を行った結果、対照が可能であると認めたときは、その旨を当該現場足痕跡等を送付した署長等に連絡するものとし、当該連絡を受けた署長等は、当該現場足痕跡等について現場指紋、足痕跡等送付書を作成の上、鑑識課長に速やかに送付するものとする。
第6 現場足痕跡の検査
鑑識課長又は研究所長は、署長等から現場足痕跡等の送付を受けたときは、現場足痕跡に受理番号を付して写真撮影を行うとともに、速やかに、次に掲げる検査を行わなければならない。ただし、(1)の選別の結果、対照不能と認められたものについては、写真撮影を省略することができる。
(1)現場足痕跡について、対照可能・不能の選別
(2)対照可能な現場足痕跡と関係者足跡及び被疑者以外の者が犯罪現場に残したと認められる痕跡との対照による遺留足痕跡の認定
(3)遺留足痕跡のうち足紋(以下「遺留足紋」という。)と後記第15の1により保管する足紋票との対照
(4)遺留足痕跡(遺留足紋を除く。)について、その種類、模様、大きさ等の調査
(5)その他捜査上の参考となる事項の調査
第7 検査結果の通知
1 前記第6により検査を行ったときは、鑑識課長にあっては足痕跡検査結果通知書(別記様式第2号)を、研究所長にあっては痕跡検査結果通知書(別記様式第3号)を作成し、その結果を現場足痕跡等を送付した署長等に通知するものとする。
なお、検査の結果、現場足痕跡の全てが対照不能であった場合、既に被疑者が検挙されて事件が解決している場合その他鑑識課長又は研究所長が作成の必要がないと認める場合は、その作成を省略することができる。
2 現場足痕跡等を送付した署長等は、前記1により検査結果の通知を受けたときは、現場指紋、足痕跡等送付簿に当該検査結果を記載しておくものとする。
第8 遺留足痕跡票の作成及び保管並びに現場足痕跡等の返送
1 鑑識課長又は研究所長は、前記第6及び第7の1により処理した現場足痕跡等のうち、遺留足痕跡については、遺留足痕跡票(別記様式第4号)を作成し、受理番号順に保管するものとする。
2 鑑識課長又は研究所長は、前記第6及び第7の1並びに前記1による処理が終わった現場足痕跡等については、速やかにこれを送付した署長等に返送するものとする。
第9 足跡画像検索システムへの履物痕の登録等
1 鑑識課長は、前記第8の1により遺留足痕跡票を作成した遺留足痕跡のうち、履物痕については、足跡画像検索システム(履物痕の写真画像を電磁的方法により記録し、当該履物痕の分類番号(履物底に係る足跡等の分類基準(昭和60年10月3日警察庁丙鑑発第15号)に定める番号)その他必要事項を入力して、履物痕の検索を行うシステムをいう。)に登録するものとする。ただし、当該履物痕に係る被疑者が既に検挙されて事件が解決している場合その他鑑識課長が登録の必要がないと認める場合は、この限りでない。
2 前記1による登録に当たっては、事件1件について、2種類以上の履物痕がある場合はその種類ごとに登録し、同種の履物痕がある場合は最も鮮明なものを登録するものとする。
3 前記1及び2により登録した履物痕に係るデータは、次のいずれかに該当するときに抹消するものとする。
(1)当該事件の発生の日から起算して10年が経過したとき。
(2)被疑者が検挙されて事件が解決したとき。
(3)その他鑑識課長が登録しておく必要がないと認めたとき。
第10 現場足痕跡等の保管
1 前記第8の2により返送された現場足痕跡等は、返送を受けた署長等が保管するものとする。
なお、鑑定等のため、他の所属に移ちょうした場合は、移ちょう先の所属の長が保管するものとする。
2 現場足痕跡等は、足痕跡送付・保管袋に収納し、又はこれを表面に貼り付ける等、他の事件の資料と混同しないように整理保管するものとする。
第11 留足痕跡票及び現場足痕跡等の廃棄
1 遺留足痕跡票は、当該遺留足痕跡票に係る事件の発生の日から起算して3年が経過したときに廃棄するものとする。
2 前記第10により保管する現場足痕跡等及びこれを撮影したネガフィルム並びにこれらに替わる電磁的方法による記録については、公訴時効の期間が経過したときに廃棄するものとする。ただし、そのいずれも当該事件の解決等により、保管の必要がなくなったとき又は保管する現場足痕跡の全てが対照不能であるときは、その期間内であっても廃棄することができるものとする。
第12 足紋票の作成
1 署長等は、侵入犯罪(屋内に侵入して敢行した凶悪犯、粗暴犯、盗犯若しくは性犯又は住居侵入犯をいう。以下同じ。)の被疑者を逮捕し、又は侵入犯罪の被疑者の引渡しを受けたときは、足紋票(別記様式第5号)を作成するものとする。
2 署長等は、侵入犯罪以外の犯罪の被疑者を逮捕し、又は侵入犯罪以外の犯罪の被疑者の引渡しを受けた場合で、必要があると認めるときは、足紋票を作成するものとする。
3 署長等は、身体の拘束を受けていない被疑者について捜査のため必要があると認めるときは、その承諾を得て足紋票を作成するものとする。
4 署長等は、前記1から3までの規定により足紋票を作成したときは、指掌紋記録・処分結果資料作成処理簿(規程別記様式第1号)に必要事項を記載しておくものとする。
第13 足紋票の送付
署長等は、前記第12の1から3までにより足紋票を作成したときは、足紋票送付書(別記様式第6号)を添付し、速やかに鑑識課長に送付するものとする。この場合においては、指掌紋記録・処分結果資料作成処理簿に必要事項を記載しておくものとする。
第14 足紋票と遺留足痕跡票との対照
1 鑑識課長は、署長等から足紋票の送付を受けたときは、保管している遺留足紋に係る遺留足痕跡票と対照するものとする。
2 鑑識課長は、前記1の対照の結果、一致するものを発見した場合は、その旨を署長等に回答するものとする。この場合、署長等から文書による回答が必要であるとの依頼があったときは、現場足紋確認通知書(別記様式第7号)を作成の上、送付するものとする。
第15 足紋票の分類保管及び廃棄
1 鑑識課長は、足紋票を左足と右足に分類して保管するものとする。
2 鑑識課長は、保管する足紋票に係る者の死亡が確認されたときその他足紋票を保管する必要がないと認められるときは、当該足紋票を廃棄することができる。
第16 遺留足跡写真票の送付等
1 鑑識課長は、規則第5条第1項に規定する場合のほか、遺留足跡に係る被疑者が次のいずれかに該当する事件の被疑者である場合は、直ちに遺留足跡写真票(細則別記様式第1号)を作成し、警察庁犯罪鑑識官に送付するものとする。
(1)広域重要事件捜査要綱(平成元年5月29日警察庁丙捜一発第12号、刑企発第17号、捜二発第10号、国際発第34号、鑑発第12号)に基づき警察庁指定事件、警察庁準指定事件又は警察庁登録事件とされた事件
(2)犯罪手口資料取扱規則(昭和57年国公委規則第1号)第7条第1項の規定により送付を受けた刑事日報により「事件通報」又は「参考通報」がなされた事件
2 鑑識課長は、前記1により送付した遺留足跡写真票について、規則第5条第3項の規定により警察庁犯罪鑑識官から通知を受けたときは、その旨を直ちに当該遺留足跡写真票に係る遺留足跡を送付した署長等に通知するものとする。
3 鑑識課長は、遺留足跡写真票に係る事件の被疑者が検挙されたとき、当該遺留足跡が関係者足跡であることが判明したとき及びその他の理由により当該遺留足跡を対照する必要がなくなったと認めるときは、速やかに、その旨を警察庁犯罪鑑識官に通知するものとする。
第17 他の都道府県鑑識課長に対する遺留足跡照会
1 署長等は、規則第6条第1項の規定により警視庁又は他の道府県警察本部(北海道警察の方面本部を含む。)の鑑識課長(以下「他の都道府県鑑識課長」という。)に対し、遺留足跡照会を行う必要があると認めるときは、鑑識課長に電話等により照会を依頼するものとする。
2 鑑識課長は、前記1により遺留足跡照会の依頼を受けたときは、速やかに、遺留足跡写真票を作成して、他の都道府県鑑識課長に照会するものとする。
3 鑑識課長は、前記2により照会した遺留足跡照会に対する回答を受けたときは、その結果を照会した署長等に回答するものとする。
第18 履物底写真票の作成等
鑑識課長は、大阪府内の履物製造業者又は履物販売業者が新しく製造し、又は販売した履物について、その履物底を写真撮影した上、履物底写真票(細則別記様式第2号)を2部作成し、1部は製造所等調査表(細則別記様式第3号)を添えて警察庁犯罪鑑識官に送付し、他の1部は履物底写真票台紙(別記様式第8号)に貼り付け、履物底に係る足跡等の分類基準に基づいて分類した上、保管するものとする。
第19 履物名称照会
1 鑑識課長は、署長等から、前記第5の1により現場足跡の送付を受けたとき、及び規則第8条第1項の規定により履物名称照会を受けたときは、保管する履物底写真票と対照して履物の種類、名称、製造業者等について調査し、その結果を現場足跡を送付し、又は履物名称照会をした署長等に回答するものとする。
2 鑑識課長は、前記1による対照をした結果、該当する履物底写真票がないときは、規則第8条第3項の規定により警察庁犯罪鑑識官に履物名称照会を行い、その結果を前記1により回答した署長等に通知するものとする。
第20 足跡手配
1 鑑識課長は、重要又は特異な事件の捜査のため必要があると認めるとき、及び2以上の警察署管内において同一又は類似の遺留足跡を発見し、同一被疑者による連続犯行が予想されるときは、足跡手配書(別記様式第9号)を作成し、規則第9条第1項の規定による足跡手配を行うものとする。
2 署長等は、足跡手配に係る被疑者を検挙したときは、速やかに、その旨を鑑識課長に通知するものとする。
3 鑑識課長は、前記2により検挙の通知を受けたとき、又は足跡手配の必要がないと認めたときは、足跡手配解除通知書(別記様式第10号)を作成し、関係の署長等に通知するものとする。
第21 被疑者足痕跡照会
1 署長等は、規則第10条第1項の規定による被疑者足跡照会及び痕跡による犯罪捜査のための照会(以下「被疑者足痕跡照会」という。)の必要があると認めるときは、被疑者足痕跡照会書(別記様式第11号)に当該被疑者の履物その他の対照資料を添えて鑑識課長に照会するものとする。
なお、遺留足紋のある事件について照会を依頼する場合で、保管する足紋票がないときは、当該被疑者の足紋票を添えて照会するものとする。
2 鑑識課長は、前記1により照会を受けた場合は、速やかに保管している遺留足痕跡票との対照を行い、その結果を照会した署長等に回答するものとする。
3 鑑識課長は、前記1により照会を受けた場合において、当該被疑者が他の都道府県の区域にわたって犯罪を行っていると認めるときは、警察庁犯罪鑑識官又は他の都道府県鑑識課長に照会するものとする。
4 鑑識課長は、前記3により照会した被疑者足痕跡照会に対する回答を受けたときは、その結果を照会した署長等に回答するものとする。
第22 鑑定の嘱託
1 署長等は、前記第5の1により鑑識課長に送付した足痕跡の鑑定を必要とするときは、鑑定嘱託書発信簿(法医・理化学鑑定事務処理要綱(昭和40年12月21日例規(識)第86号。以下「鑑定要綱」という。)別記様式第3号)に必要事項を記入の上、鑑定嘱託書(規程別記様式第15号)に鑑定資料を添えて鑑識課長に嘱託するものとする。
2 署長等は、前記第5の1により研究所長に送付した痕跡の鑑定を必要とするときは、鑑定嘱託書発信簿に必要事項を記入の上、鑑定嘱託書(鑑定要綱別記様式第2号)により鑑定資料を添えて研究所長に嘱託するものとする。
3 鑑識課長は、前記1により鑑定の嘱託を受理したときは、速やかに鑑定の上、鑑定書(規程別記様式第16号)を作成し、鑑定資料と共に嘱託した署長等に送付するとともに、鑑定処理簿(別記様式第12号)にその結果を記載しておくものとする。ただし、鑑定の嘱託と併せて被疑者足痕跡照会があったものについては、保管資料と対照した後、速やかに鑑定資料を送付するものとする。
4 研究所長は、前記2により鑑定の嘱託を受理したときは、速やかに鑑定の上、鑑定書(鑑定要綱別記様式第5号)を作成し、鑑定資料と共に嘱託した署長等に送付するとともに、鑑定受理簿(鑑定要綱第3に規定する鑑定受理簿をいう。以下同じ。)にその結果を記載しておくものとする。
第23 備付簿冊
細則第8条の規定により、鑑識課長、研究所長及び署長等は、次の表に掲げる簿冊を備え付け、所定の事項を記録しておくものとする。
簿冊の種類 作成者 名称 様式
足痕跡関係簿冊 鑑識課長 足痕跡受理簿 別記様式第13号
署長等 現場指紋、足痕跡等送付簿 規程別記様式第10号
照会等関係簿冊 鑑識課長 警察庁及び他府県警察に対する遺足跡・履物名称照会処理簿 別記様式第14号
警察庁及び他府県警察に対する被疑者足跡照会処理簿 別記様式第15号
他府県警察からの遺留足跡・被疑者足跡照会受理簿 別記様式第16号
足跡手配・解除経過簿 別記様式第17号
被疑者足痕跡照会受理簿 別記様式第18号
署長等 被疑者足痕跡照会処理簿 別記様式第19号
足紋関係簿冊 鑑識課長 足紋票受理簿 別記様式第20号
鑑定関係簿冊 鑑識課長 鑑定処理簿 別記様式第12号
研究所長 鑑定受理簿 鑑定要綱第3の規定により研究所長が定める様式
署長等 鑑定嘱託書発信簿 鑑定要綱別記様式第3号
第24 経過措置
この例規通達の施行の際現にこの例規通達による改正前の足こん跡取扱要綱の規定により作成された足こん跡に関する資料は、改正後の足痕跡取扱要綱の規定により作成されたものとみなす。